東京地方裁判所 昭和40年(ワ)3909号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告は右の如き一連の仲介行為があつた以上、被告が本件土地について何等情報を得ておらず、原告の紹介、案内ではじめて本件土地を知りえ、その結果本件土地を買受けることのできた本件の場合、第三者の仲介により売買契約が成立したとしても原告は仲介手数料を被告に請求しうると主張するのでこれを考えるに、まず三枝了が本件土地を仲介し売買契約を成立させたことと原告の前記行為との間になんらかの因果関係があつたかどうかは本件全証拠からも明らかでない。証人松本権右工門、同三枝了、同水野良男の各証言を総合すると、被告が三枝了に土地買受の仲介を依頼したのは三十六年夏頃であつて、原告が被告会社社員を現場に案内した時期に符合するが、右三枝および水野の証言によると、本件土地を三枝らが探知したのは独自の調査によるものであることが認められ、これを覆すに足る証拠はない。しかも証人服部金太郎、同三枝了、同水野良男の各証言によると本件土地売買の仲介にあたりもつとも重要でかつ困難であつたのは土地所有者との交渉にあつたのであつて、本件土地は農地であり、しかも細分されて所有者の数が多く、その所有者の中には売却に反対するものもいて、その説得と農地転用の手続のため、その交渉にあたつた三枝らは長期にわたり多大の努力を傾けなければならなかつたことを認めることができる。これに対し原告は原告本人尋問の結果から明らかなごとく自らは土地所有者たちとの交渉をしておらず、又売却の意思の有無についてすら確認していないことが認められる。かように、原告の仲介行為が物件の紹介と現場の案内に止まり、それ以上を出ない本件の場合、被告が他の仲介業者の斡旋により当該物件を購入しえたとしても、その際の被告の他の業者に対する仲介依頼が原告の仲介行為を利用し、原告を故意に排斥する目的で行なわれたとか、他の業者の仲介による契約成立と原告の仲介行為との間に因果関係が認められるとかいうならば格別、本訴においてはそのような事情は認められず、しかも土地の買受取得にあたり単に物件の紹介や現場の見分の外に、売主である多数土地所有者との交渉の過程において多大の努力を要するものであることが認められる本件では、原告の前記認定の如き仲介行為が行なわれたとしても、直ちにそれについて報酬を請求しうるものではないと解するのを相当とする。(平賀健太 岡垣学 荒木友雄)